8. 動詞
パンドゥニアには動詞にはひとつの語形しかありません。 人称、数、時制、法などを表現する際には、動詞の語形を変えるのではなく、個別の単語を使用します。
人称と数
人称と数は主語によって表現されます。 たとえば、 es (「〜である」) という動詞はどの人称でも同じ語形が使用されます。(訳注:この語に対応する英単語 be は、人称などによって am, are, is などの異なる語形になる。)
mi es frende.
– 私は友達です。
tu es frende.
– あなたは友達です。
da es frende.
– あの子は友達です。
vi es frende.
– 私たちは友達です。
yu es frende.
– あなたたちは友達です。
di es frende.
– その人たちは友達です。
(代名詞ではない)ただの名詞も主語になることができます。
mau es hevan. – 猫は動物です。
時制と法
時制、法、態などは補助動詞によって表現されます。補助動詞は動詞よりも前に置かれます。 複数の補助動詞が同時に使用される場合には「時制、法、相」の順で並べます。
時制
時制は動作などが生じた時間を表現するための文法形式です。 過去、現在、未来などが主要な時制です。 時制標識 did が過去時制を表し、 nun が現在時制を表し、 vil が未来時制を表します。
man did yam ban.
– 男性がパンを食べました。
man nun yam ban.
– 男性がパンを食べています。
man vil yam ban.
– 男性がパンを食べるでしょう。
また、「過去から見た未来」などの複雑な時制を表現するために、複数の時制標識を併用することができます。
man did vil yam ban. – 男性がパンを食べようとしていました。
相
相は動作などの段階を表現します。 パンドゥニアには bi と hav という二種類の相標識があります。
bi はある特定のタイミングで動作が行われている最中であること、進行中であることを示します。 そのタイミングが過去、現在、未来のどれであるのかを表すにあたっては時制標識を使用します。
man bi yam ban. – 男性はパンを食べている最中でした。 – 男性はパンを食べている最中です。 – 男性はパンを食べている状態になるでしょう。 man did bi yam ban. – 男性はパンを食べている最中でした。 man nun bi yam ban. – 男性はパンを食べている最中です。 man vil bi yam ban. – 男性はパンを食べている状態になるでしょう。
hav は動作が完了し、その影響が現在まで残っていることを表します。
man hav yam ban.
– 男性はパンを食べ終わりました。
– 男性はパンを食べ終わったところです。
– 男性はパンを食べ終わるでしょう。
man did haf yam ban.
– 男性はパンを食べ終わりました。
man nun haf yam ban.
– 男性はパンを食べ終わったところです。
man vil haf yam ban.
– 男性はパンを食べ終わるでしょう。
法
条件法は、動作が他の条件に依ることなどを表現します。条件法は、法標識 vud によって表現されます。 主節でも従属節でもこの単語を使用することができます。
mi vud go, if tu vud las mi.
– もしあなたがそうさせてくれるのなら、私は行くだろう。
tu no vud es suka, if mi vud go.
– もし私が行くのなら、あなたは嬉しく思わないだろう。
補助動詞 shud (「するほうがよい」) は義務、必要性、欲求、助言、予期などを表します。
ma voka vi. vi shud go.
– おかあさんが私たちを呼んでる。 行かなくちゃ。
da shud hav kom pre nun.
– あいつ、今頃にはもう来てなくちゃいけなかったのに。
evri von shud vote.
– 誰もが投票すべきだよ。
命令法は依頼や命令を表現します。 パンドゥニアでは、この法は補助動詞 shal で表現されます。 どの人称についても命令法を使用することができます。
vi shal go! – (私たちは一緒に)行きましょう! di shal kurse! – あいつらを走らせろ!
shal は二人称に対しても使用できますが、この人称に限り、命令の語気を強めるために主語と補助動詞の両方を同時に省くことができます。
tu shal kom! = kom!
– 来い!
yu shal kom! = kom!
– (おまえたち、)来い!
他動性
動詞は以下の3種類に分類することができます。
- 他動詞は必ず直接目的語(動作の対象)を必要とします。
- 自動詞は目的語を受け付けません。
- 自他動詞は自動詞と他動詞のどちらとしても使用できます。
パンドゥニアの動詞は、ふつう自他動詞的です。文の構造によって自動詞としても他動詞としても使用できます。 目的語が後続していれば他動詞になり、そうでない場合には自動詞になります。
mi bule sui.
– 私は水を沸かします。 (他動詞)
sui bule.
– 水が沸きます。 (自動詞)
baker bake ban.
– パン屋がパンを焼きます。 (他動詞)
ban bake in tanur.
– オーブンの中でパンが焼けます。 (自動詞)
複合動詞構文は、複数の動詞がひとつの主語を共有するものです。
mi kan kitab da javab.
≈ その答えを書く能力が私にはあります。
– 私はその答えを書けます。
mi halal kitab da javab.
≈ その答えを書く許可が私に下されています
– 私はその答えを書いてもよいです。
mi mus kitab da javab.
≈ その答えを書く義務が私にはあります。
– 私はその答えを書かねばならない。
補助動詞は他動詞として使用することができます。
guru halal mi kitab da javab.
– 教師が私にその答えを書く許可を下す。
guru mus mi kitab da javab.
– 教師が私にその答えを書かねばならないようにさせる。
前置詞
パンドゥニアでは前置詞はほとんど動詞と同様の振る舞いをします。 ただし、どの前置詞も必ず目的語を必要とします。
a
前置詞 a (「に、で、に於いて」)は時間や空間などを表します。
vi marche a dau.
– 私たちは道を歩く。
mau side a meza.
– 猫がテーブルに座っている。
mi mus sta long a labur.
– 私は職場に長時間居なければならない。
to
前置詞 to (「に、へ、のために」)は目的地、目標、使途などを表します。
di marche to bazar.
– その人たちは市場に歩いていきます。
mi van don da hir buk to yu.
– 私はこの本をあなたにあげたい。
of
前置詞 of (「から」)は由来や離脱などを表現します。
di kom of Brazil.
– あの人たちはブラジルから来ました。
da lexe kitab es of arabe asle.
– この kitab という単語はアラビア語の語源から来たものです。
ex
前置詞 ex (の外で)は外側を表します。
deme ye proteste ex da burge. – 城の外で民衆が抗議をしている。
in
前置詞 in (に、で、の中で)は内側を表します。
zulmer ye sir in da burge. – 暴君は城に隠れています。
kon
前置詞 kon (と、と一緒に)は共に動作をするものを表します。
da loga kon da shefe. – そのひとは上司と会話をします。
pos
前置詞 pos (の後で、の後ろに)は時間的または空間的に後方にあることを表します。
di kom pos mi. – その者たちが私の後ろから来ている。
pre
前置詞 pre (〜の前で、〜の前に)は時間的または空間的に前方にあることを表します。
di kom pre mi. – その者たちが私の前から来ている。
pro
前置詞 pro (〜のために)は意図、原因、動機などを表します。
mi kurse pro salta. – 私は健康のためにジョギングをする。
re
前置詞 re (に、まで)は戻る動作を表します。
da don da buk re mi. – その人は私にその本を返す。
tra
前置詞 tra は「〜を通じて、〜を通して」という意味です。
via
前置詞 via は経由点を表します。
vi kom to Berlin via Praha. – 私たちはプラハを経由してベルリンに行く。
vise
前置詞 vise (の代わりに)は代理や代替を表します。
da loga vise mi. – その人が私の代わりに話してくれる。